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グリーン成長戦略とは?14の産業分野をわかりやすく解説


2015年のパリ協定により、世界中の国々が「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」ことを宣言しました。
これにより、これまで制約やコストと考えられていた温暖化対策が経済成長への必須条件に変わったのです。
それは、機関投資家がESG投資の観点から投資する傾向を強めたことからも伺えます。
そして日本国内では、これを強力に推し進めるため「グリーン成長戦略」がとられています。

「グリーン成長戦略」とはどのようなものか、産業界で持続可能な社会を目指すマツシマメジャテックが解説します。


グリーン成長戦略とは?



グリーン成長戦略とは、「環境に配慮することが経済成長へ繋がる」ことを実現するための政策です。

カーボンニュートラル宣言を日本の成長の機会として捉え、従来の発想を転換し、産業構造や社会経済を変革することで経済成長と環境適合の好循環を作ります。
国が今後の具体的な見通しを示し目標を掲げ、積極的に取り組む企業の挑戦を促しています。
これにより成長が期待される14の産業分野が選ばれています。それぞれに高い目標を設定した実行計画と4つのフェーズからなる工程表が作られ動き出しています。
中でもエネルギー政策は最も需要な位置をしめます。まずは日本のエネルギー政策と需給の見通しについて見てまいります。


<業界マメ知識>
カーボンニュートラルとは?意味をわかりやすく解説



日本のエネルギー政策及びエネルギー需給の見通し


こちらはCO2の部門別排出割合のグラフです。エネルギー転換部門、いわゆる電力由来の排出が非常に多いことが分かります。まずは電力部門から日本のエネルギー対策と需給の見通しを見てまいります。



※出典:国立研究開発法人 国立環境研究所 温室効果ガスインベントリより


❚ 電力部門


電力部門ではCO2排出をできる限り抑えつつ、クリーンなエネルギーへの転換が急務です。例えば、次のような分野です。

① 再生可能エネルギーの活用

系統を整備。コストを低減し周辺環境との調和を図りつつ、変動する出力調整に蓄電池を活用します。
成長分野:洋上風力産業・蓄電池産業

② 水素発電

供給量・需給量の拡大、インフラ整備、コスト低減を実施します。
成長分野:水素産業の創出

③ 火力

CO2回収の技術を確立。適地の開発やコストを低減します。
火力発電の必要最小限の利用はしかたないので、不足分を燃料アンモニアや水素発電などで追求します。
成長産業:カーボンリサイクル産業、燃料アンモニア産業の創出

④ 原子力

確立された脱炭素技術ですが、依存度は低減しながら安全性向上を図り最大限活用します。
成長分野:安全性に優れた次世代炉の開発。

❚ 電力部門以外:産業、運輸、業務・家庭

一方、電力以外の「産業」、「運輸」、「業務・家庭」では電化が中心となります。熱需要には「水素化」、「CO2回収・再利用」を活用します。また、電化により電力需要が増加するため省エネ関連産業が成長分野となてきます。

① 産業

水素還元鉄等による製造プロセスの変革。
製鉄では銑鉄製造過程で発生した水素を一部還元剤として高炉に利用することでCO2排出量の削減が見込まれます。
参考:経済産業省 資源エネルギー庁 「水素を活用した製鉄技術、今どこまで進んでる?

② 運輸

EVなどの電動化だけでなく、バイオ燃料、水素燃料も活用していきます。

③ 業務・家庭

ZEHにより住宅の光熱費80~100%節減。電化、水素化、蓄電池活用が期待されています。
※ZEHとは「ゼッチ」と読み、Net Zero Energy Houseの略です。高断熱・高効率設備システムなどで省エネを実現し、再生可能エネルギーを導入することで年間エネルギー消費量収支がゼロになることを目指した住宅のことです。

成長分野:水素産業、EV、蓄電池産業、運輸関連産業、住宅・建築物関連産業

3.グリーン成長戦略の枠組み

民間投資を後押しし約240兆円の現預金の活用を促します。さらに世界に目を向けると環境関連投資資金は3000兆円とも言われています。これらを呼び込み雇用と成長を生み出していくことが狙いになっています。

成長が期待される14の産業分野



※出典:経済産業省 資源エネルギー庁 「カーボンニュートラルに向けた産業政策”グリーン成長戦略”とは?」より

1)実行計画

各分野毎に次のような実行計画が盛り込まれ関係省庁が一体となって取り組みます。
① 年限を明確化した目標

② 研究開発・実証

③ 規制改革・標準化などの制度整備

④ 国際連携



2)今後成長が期待される14分野の成長戦略


❚ エネルギー関連産業

① 洋上風力・太陽光・地熱産業
特に洋上風力産業は大量導入やコスト低減が可能で経済波及効果が期待されることから再生可能エネルギーの主力となりえます。2040年には全世界で562GW(現在の24倍)、120兆円以上の投資が見込まれる産業です。国内にサプライチェーンを新たに構築する必要があり、国内外の投資の呼び込みや先行する海外勢との関係構築も重要です。
・目標:2040年までに3000万~4500万kWの案件化を目指す。
・2030年をめどに商業施設や家庭の壁などにも設置できるような普及可能な次世代太陽電池の開発を推進する。


② 燃料アンモニア産業
燃料アンモニアはCO2を排出しない燃料です。石炭に混ぜて発電すればCO2排出量を抑えることができます。現在の石炭火力から他のクリーンな発電への移行にはまだ時間がかかります。その移行期を支えるのに重要な方式です。また、アンモニア燃焼によるNOX発生を抑える技術も確立してきており、国内火力発電所で利用できるようになれば海外へも展開が期待される技術です。いち早く国際的なサプライチェーンを構築し、世界でのアンモニア供給・利用産業の主導権を握ることが狙いです。
・2030年に向けて20%混焼の実証を3年間実施(20%のCO2排出削減が可能)
・日本の調達サプライチェーンを構築し2050年で1億トン規模を目指す。


③ 水素産業
水素はカーボンニュートラルのキーテクノロジーです。発電・輸送・産業などの幅広い分野で活躍が期待されています。また他にも、水素発電タービンやFCトラックなどの商用車、水素還元鉄といった分野での国際競争力を強化していく狙いです。
・水素発電コストをガス火力以下に低減(水素20円/N㎥程度以下のコスト低減を実現する。)
・2030年に最大300万トン、50年に約2000万トンの導入量を目指す。


④ 原子力産業
原子力は確立された脱炭素技術ですが、更に安全性が向上した小型炉(SMR)や核融合炉などの開発も行っていきます。
・小型炉(SMR)の国際連携プロジェクトに日本企業が主要プレーヤーとして参画しており、グローバル展開・量産体制を確立していく。
・高温ガス炉で日本の規格基準普及へ他国関連機関と協力推進していきます。


❚ 輸送・製造関連産業

⑤ 自動車・蓄電池産業
・2030年半ばまでにガソリン車新車販売中止。乗用車新車販売で電動車100%を目指す。
・2030年までにEV用電池パック価格1万円/kWh以下を目指すことで、ガソリン車と同等の経済性を確立する。
・インフラ整備。蓄電池への大規模投資(100GWh)、EV-FCの導入、充電インフラ(15万基)・水素ステーション(1000基)の整備。
・サプライチェーン、バリューチェーンの業態編転換・事業再構築を支援する。


⑥ 半導体・情報通信産業
・デジタル化によるエネルギー需要の効率化・省CO2化の促進(「グリーンbyデジタル」)
・デジタル機器・情報通信産業自身の省エネ・グリーン化。データセンター使用電力の一部再生可能エネ化を義務化。
・DX推進に伴うグリーンデータセンターの国内立地推進と次世代情報通信インフラの整備。
・2040年に半導体・情報通信産業のカーボンニュートラル目指す。


⑦ 船舶産業
・LNG燃料船の高効率化のため低速航行や風力推進システムと組み合わせCO2排出削減率86%達成を目指す。
・再生メタン活用(カーボンリサイクル)により実質ゼロ・エミッション化を推進する。


⑧ 物流・人流・土木インフラ産業
・水素・アンモニアなどの次世代エネルギーの大量輸入や貯蔵・利活用を見据え、港湾にカーボンニュートラルポートを形成する。
・脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や臨海部産業の集積などを通じて温室効果ガスの排出を全体としてゼロにします。
・海外からの次世代エネルギー資源獲得に資する港湾整備を推進する。
・自家用車へ依存しない移動手段の確保。地域公共交通活性・充実、Maasの活用。
・まちづくりと連携しCO2排出の少ない電動化・自動化された公共交通やLRT・BRTの導入を促進。


⑨ 食料・農林水産業
・地産地消型エネルギーシステムの構築に向けた規制の見直し。
・生産・流通・消費各段階のデータ連携で生産性向上・食品ロス・CO2削減の両立するスマートフードチェーンを構築する。
・CO2吸収を効果的にするために、植林や森林の若返り、エリートツリーの開発などを実施する。
・海洋生態系の再生への取組としてブルーカーボン(マングローブや海藻など海洋生態系による炭素貯留)の炭素吸収量をインベントリ登録する。


⓾ 航空機産業
・2030年までにハイブリッド電動化、2050年全電動化に向けて技術の確立を目指す。
・2035年以降の水素航空機の本格投入を見据え、水素供給に関するインフラやサプライチェーンを検討する。


⑪ カーボンリサイクル産業
・2030年までにCO2を吸収して作るコンクリートの需要拡大を通じて既存コンクリートと同じ価格水準を目指し国際展開する。
・2030年までに藻類培養によるバイオ燃料をジェット燃料と同価格水準を目指すし国際需要につないでいく。
・2050年までに光触媒による人工光合成でできるプラスチック原料を既存プラスチック製品と同じ価格水準を目指し海外展開する。

❚ 家庭・オフィス関連産業

⑫ 住宅・建築物/次世代型太陽光産業
・利用する人のインセンティブを検討し、住宅・建築物へのZEH・ZEBの普及を促す。ZEHにより住宅の光熱費80~100%を節減。
・住宅・ビルのエネルギー管理システム(HEMS・BEMS)を用いて太陽光発電システムの発電量などに合わせた電力需給調整に役立つエネルギーマネジメントを進める。
・ビッグデータ・AI・Iotなどを活用してEV・蓄電池・太陽光発電などの最適な制御を実現。規格や制度の見直しも行いエネルギーマネジメントの導入を強化する。
・有望技術の開発・実証の加速化やビル壁面など新市場獲得に向けた製品化、規制的手法を含めた導入を支援する。
※ZEHとはゼッチと読み、Net Zero Energy House の略で、高断熱・高効率設備システムなどで省エネを実現し、再生可能エネルギーを導入することで年間エネルギー消費量収支がゼロになることを目指した住宅です。ちなみにこのビル版をZEBと呼びます。(ZEB:Net Zero Energy Bill の略)


⑬ 資源循環関連産業
・リデュースではゴミの排出量を減らすため資源循環の効率化や省CO2をすすめる。関係者間で使用済み製品・素材に関する必要な情報を共有するためのシステムを実証する。
・リニューアブルではバイオマス化・再生材料の利用拡大、高機能化・用途拡大・低コスト化に向けた技術開発などです。
・リユースでは法整備や計画策定で技術開発・社会実装を青とし。グリーン購入法によりリサイクル製品調達拡大推進。
・リサイクル性の高い高機能素材やリサイクル技術の開発・高度化、回収ルートの最適化、設備容量の拡大に加え、再生利用の市場拡大を図る。


⑭ ライフスタイル関連産業
・住まい・移動のトータルマネジメント、普及を図る。(ZEH・ZEB、家電・給湯、地域の再生可能エネルギー、EV/FCVなどの実用化)
・Jークレジット制度などで申請手続きの電子化・モニタリングやクレジット認証手続きの簡素化・自動化を図り、ブロックチェーンを活用した取引市場の検討を進める。

※参照:経済産業省サイトより

3)工程表

14のすべての産業分野において研究段階から実務段階に至るまでを4つのフェーズに分けて工程表が組まれています。ここでは各分野の細かな工程は割愛し共通の4つのフェーズについて紹介いたします。

研究開発フェーズ:政府が造成する基金と民間の研究開発投資で進める。

実証フェーズ:民間投資の誘発を前提とし官民協調投資によってすすめる。

導入拡大フェーズ:公共調達、規制・標準化などの制度整備による需要拡大と量産化によるコスト低減を図る。

自立商用フェーズ:規制・標準などの制度を前提に、公的な支援学とも自律的に商用可が進むようにする。

これに連動して予算、税制面、金融面、規制改革・標準化、民間の資金誘導の分野でも対策が必要です。取り組みは次の通りです。

●予算
野心的なイノベーションに挑戦する企業を継続支援するため、2兆円規模の基金を創設する。

●税制面
民間投資を喚起するため、カーボンニュートラルに向けた投資や・研究開発・事業再構築・再編に取組企業に対し繰越欠損金の控除上限を引き上げる特例の創設を講じる。

●金融面
低炭素化や脱炭素化に向けた革新技術への資金流入をサポートするため情報開示や評価の基準、金融市場のルール作りを行う。

●規制改革・標準化
需要の創出と価格低減につながるように、水素ステーションに関する規制改革、再生可能エネルギーが優先される系統運用ルールの見直し、自動車の電動化推進のための燃費規制の活用やCO2を吸収してるくるコンクリートなどの公共調達などについて検討していく。

●民間の資金誘導
情報開示。評価基準などの金融市場のルールづくりを海外と連携しながらすすめる。


計測プチ自慢


今後の活躍が期待される水素燃料ですが、沸点が-253℃と低いため常温では気体になります。そのため常温のままでは大量搬送できません。これを解決するため液体水素にして容積を減らして運搬する方法があります。液体水素はロケット燃料に利用されることからご存知の方も多いのではないでしょうか?
この液体水素を安全に扱うためにも貯蔵量を監視する必要がありますが、高圧や低温が影響し一般的なレベル計での計測は簡単ではありません。

実は、マツシマメジャテックは小型ロケットの液体水素タンクのレベルを計測した実績があります。
宇宙開発に少しでも携われるなんて技術者冥利に尽きます。今は、汎用化に向けて技術を磨いているところです。

なお、この技術のベースにあるのはアドミタンス式レベルスイッチです。この機会にぜひお見知りおきください。

<製品ページ>
    アドミタンス式レベルスイッチ